まいどおおきに新人アルバイトのフッキーです。
今日もサクサクとゴムのカットが進んでおります。
新人アルバイトとしても実績が数日以上になってきたので、もう既にベテランの域です。
シャキーン!!すぱっ!!!
もう僕に切れないゴムなどありません。気分はルパンの石川ゴエモンです。
ボク「いやー、またつまらぬゴムを切ってしまった。」
すかさず、超ベテランな物流センター長のトミーパイセンにたしなめられます。
トミーパイセン「おい、お客様にお出しする品物をつまらんとは何だ。謝らんかい」
ボク「あっ・・・ごごごごごごめりんこトミーパイセン!!!ちょっと職場の雰囲気を和ませようとした軽い軽いスーパーライトジョークじゃないっすかぁ。あ、今日はゴム博士なシャチョー、見回りに来ないっすねー。サボってんのかなぁ。ゴム博士の前回のお話の続きが聞きたいなぁ~」
トミーパイセン「社長はな、お取引先へのご挨拶で忙しいことが多くてこの物流センターに足を運ばれることはレア中のレア。新人バイトなんぞにお話をしていただけるだけでももったいないことだ。」
すると、物陰から二人の会話を見守っていたシャチョーが突如として躍り出てきます。
シャチョー「これこれ富田格之進、そのぐらいでいいでしょう」
トミーパイセン「こっ、これはご老公様!!皆のモノ、ひかえぃ!ひかえおろう!!」
ボク「へへぇーーーーーっ!!!・・・・って、ボクしかおらんし。水戸黄門のくだりをやっても平成生まれ令和育ちな世代にはウケないんじゃないっすかねー。ところでシャチョー、この間のお話の続き、グッドイヤーおじさんが天然ゴムを発明してから、どないな風になっていったんすか?」
シャチョー「おまいは水戸黄門に反応するあたり、どう見ても令和育ちどころか平成生まれでもなさそうじゃがのう。まあよかろう。グッドイヤーおじさんがゴムを発明した1839年以降、世界はゴムを大変に活用して工業化、産業化をどんどんすすめていったが、難しい話はわかりにくいので、ゴルフボールのハナシがいいじゃろう」
ボク「ゴルフボールっすか。えー。ゴルフって安倍総理とトランプ大統領がやるやつっすよね。おっちゃんたちの楽しみっていうか。そういやうちのオヤジもゴルフやってたから、なんかボールが家にゴロゴロとありましたねえ。ゴルフボールもゴムなんすか?」
シャチョー「そうじゃ。ゴルフが始まったのは1600年ごろのイギリスと言われておって、当時のゴルフボールは皮を縫い合わせて羽毛をぎっしりつめこんだもので職人の手作り。一個一個がとても高価で貴族のスポーツじゃった。それも数回打っただけでこわれてしまうほどだったそうじゃ」
ボク「えええ。羽毛って布団にしたら高級なやつやないですか。それを打って飛ばしてたんすか。」
シャチョー「そこにゴムのカタマリだけで作ったボールが登場する。もちろん、羽毛のカタマリよりかなり良く飛ぶので、完全にゴムに置き換わったわけじゃ。しかし羽毛よりはしっかりしておったが、当時のゴムではやはり弱かった。打ったら空中で分解してしまうことが多々あって、一番大きな割れカスが落ちたところから新しいボールでプレーするようにルールが変更されたほどじゃ。」
ボク「ゴムがとにかく世間に認知されていった大事な瞬間ですねー」
シャチョー「余談じゃが、当時、ゴムでできたゴルフボールが割れてしまうまでにたくさんのキズが付いて傷んでしまう。この表面のキズがあればあるほど良く飛ぶことが発見されて、いまでもゴルフボールの表面にはたくさんのくぼみがつけられておるのじゃ。このゴムのカタマリのボールはガタパーチャというゴムの木からできたので、ガッティボールといわれておった。」
ボク「へええ。ゴルフボールのあのブツブツはゴムボールならではやったんですねえ。」
シャチョー「その後、ゴムのカタマリから、小さいゴムの芯に細くしたゴムの糸をたくさん巻き付け、外側をゴムでできた皮でくるむボールが発明される。これは丈夫だし良く飛んだ。現在でこそゴルフボールは特殊なゴム樹脂でできた一体成型モノじゃが、それまでのゴム糸を巻いてできたボールはほんのこの前、1970年ころまで広く使われておったのじゃ。これはアメリカのゴルフ好きなハスケルおじさんが発明したので、ハスケルボールといわれておる」
ボク「あー。小さい頃、古くなったゴルフボールからぐちゃぐちゃっとした中身がでてきてたのを見ましたねー。あれはゴムだったんすねー。ハスケルおじさんえらいなー。ハスケルおじさんもゴム屋さんやったんですか?」
シャチョー「いや、ただのゴルフ好きなお医者さまじゃったらしい」
ボク「趣味が高じてゴルフの歴史をかえるってか。すごいにゃあ。」
シャチョー「とにかく、ゴムはゴルフボールをはじめ、世界の産業に大きく貢献したのじゃ。ゴルフボールメーカーには多種多様あるが、タイヤメーカーがいくつかあるじゃろう。」
ボク「そういえば、ダンロップとか、ブリヂストンとかの刻印があるゴルフボールがありますね!」
シャチョー「うむ。今どきはやっぱちょっとでもゴムの性能が良いものが問われるからのう。ダンロップはもちろんじゃし、スリクソンはダンロップ、日本では住友ゴムのブランドじゃ。ゴム本業の化学メーカーはやっぱり強いのじゃ。化学メーカーといえば、ゴムの歴史を語る上でかかせないポイントがあるのじゃが、とても聞きたいじゃろう。」
ボク「あーそうですねー。聞きたいっすねー(棒読み)ところでシャチョー、ゴルフボールはゴムでできてるってことですけど、当社でもゴルフボールは販売しているんですか?」
シャチョー「いいえ、一切販売しておりませんw」
ボク「してへんのかい!!」
参考・引用
スパイス、爆薬、医薬品 世界史を変えた17の化学物質
著 ペニー・ルクーター ジェイ・バーレサン 訳 小林力
中央公論新社